微分可能性を開区間(開集合)で考える理由

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微積分の定理の仮定において, よく「関数\(f(x)\) が開区間 \((a,b)\) 上で微分可能」という条件をつけることがある. 特に, ロルの定理や平均値の定理などで, 「関数 \(f(x)\) は\([a,b]\)で連続, \((a,b)\) で微分可能とする」という前提条件が決まり文句のように現れる.

連続性に関しては閉区間上で考えるのに, なぜ微分可能性については開区間上で考えるのか.
その理由についてまとめる.

理由

直感的な説明

端点での接線はいくらでも引けてしまうから.
微分とはそもそも, 接線の傾きを考える作業であったが, もしグラフが途中で途切れていた場合, その端点では無数に接線(接している線)が引けてしまうことになるため, そのような点では微分を考えないことが多い.

論理的な説明

微分の定義に, そもそも「点 \(c\) を含む開集合で \(f(x)\) が定義されているとき」などの前提条件が付いているから.
定義域が閉集合である場合, 端点を含むような開集合が定義域内にとれないため, 「閉集合で微分可能」という言い方はあまり用いられない.

きちんと推敲して書かれた教科書では, 微分可能性の定義を与える際に, このような前提条件が予め付け加えられている.

詳しく見ると, 例えば次のように微分可能性を定義している.

関数 \(f(x)\) が開区間 \((a,b)\) で定義されているとする. この区間内の点 \(x=c\) に対して, 極限\[
\lim_{h\rightarrow 0} \frac{f(x+h)-f(x)}{h}
\]が存在するとき, \(f(x)\) は \(x=c\) で微分可能であるという.

下線部分の前提条件から, ある点 \(c\) で微分可能であるというには, \(c\) を含む開集合でそもそも関数が定義されていなければならない. 端点を含むような区間では, その端点を含む開集合が区間内にとれないので, 微分可能であるという言い方をしないことが多い.

閉区間で微分可能であるということもある(片側微分を考える)

少しマニアックだが, 片側微分を考えれば, 「閉区間 \([a,b]\) において微分可能である」 という言い方をすることもできる.

片側微分とは, 右側微分と左側微分の総称であり, 次のように定義される.

関数\(f(x)\) が \(x=a\) において右側(左側)微分可能であるとは, 極限\[
\lim_{x\rightarrow a+0} \frac{f(x)-f(a)}{x-a} \quad \left(\lim_{x\rightarrow a-0} \frac{f(x)-f(a)}{x-a}\right)
\]が存在するということである. またこれらの極限値を右側(左側)微分係数という.

これを用いて, 端点を含む区間で微分可能であるといった場合には, 片側微分を考えることとしている教科書もある. 松坂和夫, 「解析入門 上」, 岩波書店

例えば, 閉区間 \([a, b]\) で微分可能であるとは, 次の3条件を満たすことである:

  • \(a<c<b\) となる任意の \(c\) において微分可能
  • \(a\) において, 右側微分可能
  • \(b\) において, 左側微分可能

ただし, このような考え方を用いる書籍は珍しく, 例えば次のような言い方もできることになる:

「関数 \(y=|x|\) は, \(x=0\) では微分可能ではないが,
  \(x=0\) を含む閉区間 \([0,1]\) では微分可能である. 」

このような言い回しが可能になってしまうので, この定義を採用する際には, 若干の注意が必要になる.

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