2変数関数の極値問題

数学

この記事では2変数関数の極値問題について解説します.

極値とは

まずは2変数関数での極値の定義を与えます. 簡単に説明すると点\((a,b)\)で極値をとるとは, 点\((a,b)\)の周りで十分小さい近傍を取ると, その近傍内で点\((a,b)\) での値が最大もしくは最小になっているときを言います.

定義

2変数関数 \(z=f(x,y)\) が \((x,y)=(a,b)\) において極大値(resp. 極小値)を取るとは, 次の条件を満たす \(\epsilon>0 \) 存在することである:$$x \in U_{\epsilon}(a,b) \quad \mbox{ならば}\quad f(x,y)\leq f(a,b) \quad (resp. \,f(x,y)\geq f(a,b)). $$ここに, \(U_{\epsilon}(a,b)\)は点\((a,b)\)での半径\(\epsilon\)の開近傍であり$$U_{\epsilon}(a,b)=\{(x,y)|(x-a)^2+(y-b)^2<\epsilon^2\}$$である.
さらに極大値または極小値となるものを合わせて極値という.

注意
流儀や文献によっては等号を除いて, 条件式を$$x \in U_{\epsilon}(a,b) \quad \mbox{ならば}\quad f(x,y)< f(a,b) $$として定義する場合もあります. この定義を用いると極大値でない最大値も存在しうるので注意してください. (定数関数の場合などがその例になります)

極値の判定法

1変数関数のときに極値を求めるには, 基本的には関数の微分が\(0\)になる点を求めて, 増減表を書けばよいのでした. 2変数のときも1変数の時と同様, 偏微分可能な関数が点 \((a,b)\) で極値をとるならば\begin{align} f_x(a,b)=f_y(a,b)=0 \end{align}
を満たします. ただしこの逆は一般には成立しません. 例えば以下の図のように馬の鞍型(馬に騎乗する際に用いる道具の形)になるようなときは, \(x\)軸方向に見たら極小,\(y\)軸方向に見たら極大, でも全体で見たら極大でも極小でもないときがあります. このような点を鞍点と呼んだりします.

従って\(f_x\)と\(f_y\)の値だけを調べるのでは極値かどうかを知るのには不十分で, 第二次偏導関数まで考える必要があります. 以下の定理がその\(f(x,y)\)が実際に極値を取るかどうかの判定条件になります.

定理(極値問題)

2変数関数\(f(x,y)\)を\(C^2\)級とし, 点\((a,b)\)において\(f_x(a,b)=f_y(a,b)=0\)となっているとする. このとき, 判別式を$$
D(x,y)=f_{xx}(x,y)f_{yy}(x,y)-(f_{xy}(x,y))^2
$$とすると関数\(f(x,y)\)は点\(a,b\)において
(1)\(D(a,b)>0\)のとき, 極値を取る. さらに
  ・\(f_{xx}(a,b)<0\) ならば 極大値となる.
  ・\(f_{xx}(a,b)>0\) ならば 極小値となる.
(2)\(D(a,b)<0\)のとき, 極値は取らない.

注意
\(D(a,b)=0\)のときはこの定理からは判定不能です. 極値を取るときも取らないときもあります. 自力で個別に判定することになります. 

例題1(基本問題)

\(f(x,y)=6x^2+6xy+3y^2-2x^3\)
の極値を求めよ.

解答
まずは極値の候補となる点を求めます. \(f(x,y)\)は偏微分可能なので上述したように極値を取るときは偏微分係数が\(0\), つまり\(f_x(x,y)=f_y(x,y)=0\)となります. よってこの条件を満たす点をまず探します.\(f_x(x,y)=12x+6y-6x^2\), \(f_y(x,y)=6x+6y\)ですので, 極値を取る点の候補は \begin{align}
\begin{cases}12x+6y-6x^2=0 \\ 6x+6y=0 \end{cases}
\end{align}を解けば見つかります. これを解くと極値となる点の候補は $$(x,y)=(0,0), (1,-1)$$の2点です.

 上で説明したように, これだけではまだ極値を取るとは言い切れないので,$$
D(x,y)=f_{xx}(x,y)f_{yy}(x,y)-{f_{xy}(x,y)}^2
$$の値を調べます. \(D(x,y)\)を計算するために 第二次偏導関数を計算すると,\begin{align}
f_{xx}(x,y)=12-12x, \quad f_{yy}(x,y)=6, \quad f_{xy}(x,y)=6.
\end{align}です. よって, $$D(x,y)=f_{xx}(x,y)f_{yy}(x,y)-{f_{xy}(x,y)}^2=-72x+36$$ となります. 従って極値を取る点の候補である\((x,y)=(0,0)\) 上では \(D(0,0)=36>0\), さらに\(f_{xx}(0,0)=12>0\)なので,上の定理より点\((0,0)\)上において極小値 \(f(0,0)=0\)を取ることが分かります.
 もう一つの極値を取る点の候補\((x,y)=(1,-1)\)についても調べます. \(D(1,-1) =-36<0\)なので上の定理より,\((x,y)=(1,-1)\)では極値は取りません.

例題2(境界条件が付く文章問題)

次に境界条件が付くような文章問題で, 最大値を求める問題を扱います. 一般には極大値と最大値は異なるということに注意してください. (最大値は極大値であるが, 極大値は最大値になるとは限らない.)上の定理では極値を取るかどうかまでが分かるので, その極値が境界の範囲内で実際に最大になるかどうかを考えるのがポイントです.

極大値が最大値になるかを確かめるには以下の2つの事実に注意して行います.

  • \(xy\)平面全体で極値になっていなくても, ある部分集合に制限すると境界部分で最大値を取ることがある.
  • 有界閉集合で定義される連続関数は必ず最大値を持つ.

1つ目の事実については下図のようなイメージです. 仮に極大値がxy平面全体で1つしかなかったとしても, ある境界条件が付くと境界部分で最大になることがあります.
2つ目の事実については最大値・最小値の原理というものです. こちらのサイトに詳しくまとめられていたので参考にしてみてください(参考記事:コンパクトと最大値・最小値の原理

例題
縦, 横, 高さの合計が \(a\) である直方体の体積の最大値を求めよ. 

解答
縦, 横の長さをそれぞれ\(x, y\)とすると, 体積は\(xy(a-x-y)\)と表せます. この関数を$$f(x,y)=xy(a-x-y)$$とおいておきます. このとき題意より有界閉集合$$G=\{ (x,y)| x\geq 0, \; y\geq 0, \; x+y\leq a\}$$上で関数\(f(x,y)\)の最大値を求めれば良いということになります.

 まずは上の定理に従って, 関数 \(f(x,y)\) の極値を調べます. 連立方程式$$
\begin{cases}
f_x(x, y)=0, \\ f_{y}(x,y)=0
\end{cases}$$を解くと,極値を取る点の候補は\((x,y)=(0,0), (a,0), (0,a), (\frac{a}{3}, \frac{a}{3})\)となります. \(D(x,y)=f_{xx}(x,y)f_{yy}(x,y)-f_{xy}(x,y)^2\)と置くと, \(a> 0\)より\begin{align}
D(0,0)=-a^2<0,\quad D(a,0)=-a^2<0,\quad D(0,a)=-a^2<0,
\end{align}となって\((0,0), (a,0), (0,a),\)では極値を取りません. また
\begin{align}
D\left(\frac{a}{3}, \frac{a}{3}\right)=\frac{a^2}{3}>0
\end{align}\begin{align}
f_{xx}\left(\frac{a}{3}, \frac{a}{3}\right)=-\frac{2a}{3}
\end{align}となるので, 点\((\frac{a}{3}, \frac{a}{3})\)において極大値$$f(\frac{a}{3}, \frac{a}{3})=\frac{a^3}{27}$$を取ります.

次に実際に点\((\frac{a}{3}, \frac{a}{3})\)での極大値が最大値になっているかを考えます. 点\((\frac{a}{3}, \frac{a}{3})\)は有界閉集合\(G\)に入っているので, 確かにこの点は最大値の候補になります. 一方\(G\)の境界(\(x=0\)または \(y=0\), \(x+y=a\))では\(f(x,y)=0<\frac{a^3}{27}\)となるので境界上では最大値を取りません. \(G\)は有界閉集合なので必ず最大値をとります. 従って最大値を取る点の唯一の候補である点\((\frac{a}{3}, \frac{a}{3})\)で極大値\(\frac{a^3}{27}\)は最大値となる.

以上より, 問の条件を満たす直方体の体積の最大値は\(\frac{a^3}{27}\)であり, 縦, 横, 高さが\(\frac{a}{3}\)の立方体となる.

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