2変数関数の勾配と等高線の関係についてまとめる.
勾配の定義
勾配は各点 \(\boldsymbol{(x,y)}\) において最も傾きの大きい方向をベクトルで表している.
例.
\(f(x,y)=x^2+y^2\) のとき, \(f_x(x,y)=2x, \; f_y(x,y)=2y\) より, \(f(x,y)\) の勾配は \[\nabla f(x,y)=\begin{pmatrix}2x \\ 2y\end{pmatrix}\] となる. 例えば, \[\nabla f(1,2)=\begin{pmatrix}2 \\ 4\end{pmatrix}, \quad \nabla f (-1, 1)=\begin{pmatrix}-2 \\2\end{pmatrix}\] となるので, これらが点 \((1,2)\) と点 \((-1,1)\) で最も傾きの大きい方向を表している.
勾配は等高線と垂直である
上の例からも見てとれるように, 勾配 \(\nabla f\) は等高線(厳密には等高線の接線)と直交する. 言い換えると勾配は等高線の法線ベクトルになっている. 直感的な理由としては, 等高線は傾きが \(0\) になる方向(高さの変わらない水平方向) に進むのに対して, 勾配は最も傾きの大きい方向を表すからである.
正確にまとめると次のようになる.
証明.
\(f_y(a,b)\neq 0\) のとき, 陰関数定理より, 点 \(a\) の近傍で定義された \(f(x,y) -f(a,b)=0\) の陰関数 \(y=\varphi(x)\) が存在して, \[
\varphi(x)=-\frac{f_x(x,y)}{f_y(x,y)}
\]となる. したがって, 等高線 \(f(x,y)=f(a,b)\) の点\((a,b)\) における接線の方向ベクトル \(v\) は\[
v=\pmatrix{f_{y}(a,b) \\ -f_x(a,b) }
\]である. これは\(v \perp \nabla f (a,b)\) である.
\(f_y(a,b)\neq 0\) のときは, \(f(x,y) -f(a,b)=0\) の陰関数 \(x=\psi(y)\) を用いて, 同様に示すことができる. (証明終了)
ラグランジュの未定乗数法と等高線の関係
拘束条件 \(g(x,y)=0\) のもとで \(f(x,y)\) の極値を求める問題(条件付き極値問題)を解く際には, ラグランジュの未定乗数法を用いた.
特に, 次の連立方程式を解けば極値の候補を見つけることができた:\[\begin{aligned} \begin{cases} f_x(x,y)-\lambda \, g_x(x,y) =0\\ f_y(x,y)-\lambda \, g_y(x,y) =0 \\ g(x,y)=0 \end{cases} \end{aligned}
\]詳しくはこちらの記事を参照:ラグランジュの未定乗数法と条件付き極値問題
この方程式の意味は次のように捉えることができる.
ラグランジュの未定乗数法の条件は, 等高線と曲線 \(\boldsymbol{g(x,y)=0}\) が接することを意味する. (ただし \(\lambda\neq 0\) のとき)
曲線 \(g(x,y)=0\) は曲面 \(z=g(x,y)\) における \(z=0\) の等高線だから, \(g(x,y)=0\) の法線ベクトルもまた勾配 \(\nabla g\) で表すことができる. ラグランジュの未定乗数法の条件は \[\begin{aligned} \begin{cases} f_x(x,y)-\lambda g_x(x,y) =0\\ f_y(x,y)-\lambda g_y(x,y) =0 \end{cases} \quad \Leftrightarrow \quad \nabla f = \lambda \cdot \nabla g \end{aligned}\] と書けるから, \(\lambda \neq 0\) のとき, この条件は \(f(x,y)\) の等高線の法線ベクトル \(\nabla f\) と \(g(x,y)\) の等高線の法線ベクトル \(\nabla g\) が平行であることを意味する. つまり, ラグランジュの未定乗数法の条件を満たす点では, \(\lambda \neq 0\) のとき, 必ずその点における等高線と曲線 \(g(x,y)=0\) が接している(厳密には接線の向きが同じである)ことが分かる.
このことを念頭において, 等高線をかくと, 条件付き極値問題が解きやすくなる.
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