次の等式の証明問題について, 以下のような解答を書いてしまうと, 論理的な文章の書き方としては間違いになります。この誤答のどの部分が良くないのか考えてみましょう。
\begin{align*}
(x+y)^2-(x-y)^2=4xy
\end{align*}
よくある誤答.
\begin{align*}
(x+y)^2-(x-y)^2\quad &=4xy\\
(x^2+2xy+y^2)-(x^2-2xy+y^2)&=4xy\\
4xy\quad &=4xy
\end{align*}
従って, \((x+y)^2-(x-y)^2=4xy\)が成立する.
この解答のまずいところは, 示したい等式 \((x+y)^2-(x-y)^2=4xy\) をまだ証明できていない段階で,その等式を解答の文章に書いてしまっているところです。
通常,数式や等式は1つの文章を表していて, 単に \(A=B\) と解答に書いた場合には, 「\(A\)は\(B\)に等しい」という文章を表していることになります。
つまりこの誤答は解答の1文目から 「\((x+y)^2-(x-y)^2\)と\(4xy\)は等しい」と言ってしまっていることになります。今から証明しなければならない等式, つまり読み手からするとまだ成り立っているかどうか分からない状態の等式をいきなり「この2つは等しい」と書いてしまうと当然, 良くありません。
さらに等式を縦に2つ続けて
\begin{align} A=B \\ C=D \end{align}
と書くと普通は「\(A=B\) である。だから \(C=D\) である。」という文章を表します。\(A=B\)と\(C=D\)のどちらが理由でどちらが結論なのかに注意してください。
この誤答の場合は次のように言ってしまっているのと同じことになります。
\begin{align} &\mbox{まず}\; (x+y)^2-(x-y)^2=4xy\; \mbox{である。}\\
&\mbox{だから}\; (x^2+2xy+y^2)-(x^2-2xy+y^2)=4xy\; \mbox{である。}\\
&\mbox{従って}\; 4xy=4xy\; \mbox{である。} \end{align}
これは理由と結論が逆になってしまっている, 論理的に少しおかしい文章ですよね。
自分でそう書いたつもりでなくても, 読み手は通常そのように読むのです。
ですので, 証明したい等式やその変形を解答の始めに書いてしまわないように注意してください。
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